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サヨナラの舞台裏

この場面、最初はかなり緊張していた。こういうときに思い出すのがどこぞの誰か(高校野球の監督かサッカーの監督だったと思う)が言っていた「人間誰でも緊張はする。そういうときに自分に無理にリラックス、リラックスと言い聞かせても反って逆効果。こういうときには、まず自分が緊張しているということを理解するのが大切である」この言葉だ。それを思い出しながら打席へと向かった。

確かに緊張度は凄かったが、それでも考えだけはすでに固まっていた。長打力の無い自分が二塁走者を1本で還すには、右方向しかないと。初球、外角ベルト付近のボール、ストライク。見逃したというよりも緊張して体が動かなかった。2球目、内角高め。振り遅れてファウルでカウントは2−0。この時、内で勝負されたら「何球かは辛うじてファウルで粘れてもジリ貧のままいつかは三振」と一瞬頭によぎった。3球目、低めに外れたボールがワンバウンドして後方に逸れる。それを見たランナーがそれぞれ進み二、三塁。実はこれで不思議と余計なことを考えなくなった。4球目、低めに外れてカウント2−2。このボールが自分でも驚くぐらいによく見えた。そして5球目、初球と高さはほぼ同じでコースはやや内よりの甘い球、待っていた球だ。素直にバットが出た。打球はライト前へ、「落ちる」そう確信しながら一塁ベースを駆け抜けた。

ベースを踏んで礼をするまでの間のことはよく覚えていない。とにかく、色々な顔が代わる代わる視界に飛び込んできたような気がする。今、冷静になって思うことは、いつもは場の主役になることが好きではないが、偶にはこんなのもいいかなとか思う。ビデオを観ながら記録の集計をしているとき、無邪気に喜ぶ自分も含めた皆の姿が妙に嬉しく感じた。またいつか皆であんな試合を。

文=中田正樹